北九州祝祭
・神楽について
一般的に、「かぐら」の語源は「神座」(かむくら・かみくら)が転じたものと言われています。
神座は「神の宿るところ」「招魂・鎮魂を行う場所」を意味し、神座に神々を降ろし、巫・巫女が人々の穢れを祓ったり、神懸かりして人々と交流したりするなど神人一体の神聖な宴の場です。
そこで神様への感謝と祈りを舞で奉納する目的で行われる歌舞が神楽(かぐら)と呼ばれるようになったとされています。
・豊前市の神楽について
神楽は全国各地域の神社仏閣においてそれぞれが長い歴史の中で独自に伝承してきたため、一重(ひとえ)に神楽といっても、神楽は地域によって様々です。豊前市だけでも神楽を先祖代々舞い受け継ついできた団体は実に六団体もあります。
もともと、神楽は各地域の五穀豊穣のお祭りや邪気を払う神聖な儀式など神事における、「神様への舞の奉納」であったため、その伝承方法は各地域、各団体で様々な特色や違いがあり、それぞれの団体が先祖代々、大切に受け継いできた神楽を今もなお継承しています。
・若楽について
今回の北九州祝祭「千代に八千代に」で神楽を披露する“若楽(じゃらく)“という神楽集団は豊前市に伝わる神楽の六団体に所属する若手の神楽舞たちによって、2003年に結成されました。
伝統的な神楽とは全く異なり、若楽の舞は芸術的な面を被った神楽舞たちがジャズや和太鼓に合わせて舞う実に独創的な創作神楽です。
従来の神楽とは一線を画す若楽のこうした創作神楽は一見、伝統神楽に対するアンチカルチャーの様に見えがちですが、若楽はむしろその逆と言っていいでしょう。
若楽はむしろ、現代にまで至る神楽の潮流に深く深く根差した“時代の産子“と言えます。
・神楽の現状
神楽は本来、単なる舞や演技ではなく、神を迎え、神が心地よく留まれるように場を整える神聖な行為であり、神楽が作り出す神聖な空間では、演者は神に向かって舞い、「観客の評価を目的としない」というのが本来の神楽の本質的な意義と言われています。
神楽は五穀豊穣のお祭りや邪気を払うための神懸かりの場があって初めて神楽を行うことが出来ますが、現代社会の中で神事という伝統や町内会などの地域行事と住民との関係性は希薄となり、昔に比べて、五穀豊穣祭など町内会などによって運営されるお祭りそのものが少なくなってしまいました。
披露する舞台を失った神楽も当然そのあおりをうけ、昔は全国各地にあった神楽を私達が目にする機会は徐々に失われています。
加えて、コロナ禍の活動自粛や、元々ボランティア活動に近い神楽の活動は舞う舞台だけでなく、後継者不足にも悩まされています。
・若楽の思い
若楽は、こうした神楽の伝承問題に危機感を持っていた豊前市内の若手の神楽舞たちによって設立されました。
その根本哲学には「神楽を守る、神楽を残す」ことにあります。
若楽の独創的で迫力のある創作神楽に触れ、若楽に入りたいと志願する若い世代も現在は多いですが、
「豊前市に伝わる六団体に所属しなければ若楽には入れない」
という創設以来の掟は若楽が伝統神楽の破壊者ではなく、伝統神楽の紡ぎ手であることを最も端的に表していると言えます。
「ここまで神楽が残ってきたのは、神楽を舞ってほしいと呼んでくれる地域の皆様の支えや、先祖代々ずっと舞いを伝承し、受け継いできた神楽の先輩たちのお陰だと思っています。僕たちが神楽を舞えるのは神楽に関わってくれる沢山の人々のお陰だと感謝が募れば募るほど、僕たちも絶対にこの神楽を次世代に伝承し、継承していかなくてはならない。そのために出来ることはないかと考え、作られたのが若楽なんです。伝統的な神楽を広めるために新しいことに挑戦するとしても守るところは守る。それは本当に気を付けています。」
そう語る、若楽の現代表を務める内丸さんが「僕にとって神楽は感謝を伝えるもの」という言葉を口にしていた時、僕は文献で読んだ「神楽は神様への感謝を奉納するもの」という一説をふと思い出しました。
・まとめ
若楽は決して伝統神楽の破壊者ではありません。
綴られていない彼らの軌跡を辿れば、神楽の先輩方との交流を諦めず、若楽メンバーへの神楽の勉強会を開き、若楽で挑戦して良かったものは自らが所属する神楽の団体に持ち帰って吸収するなど語られるものは常に伝統と変化の融和に挑む闘争の歴史です。
「神楽は、舞によって感謝、祈りを神に・・・」という言葉を大事にする若楽を紐解けば、伝統神楽の大切さと可能性を愚直に信じる現代の若き神楽舞たちの思いが見えてきます。
・今回の演目について
今回の北九州祝祭「千代に八千代に」で披露される「邪降神」と名付けられた作品は伝統神楽をベースとした創作神楽です。
神楽の演目で流れる曲も日本を代表する音楽家である前田憲男氏(故人)に作曲を依頼して作られたオリジナルの楽曲となっており、斬新なジャズの曲と神楽のお囃子、和太鼓(豊前天狗太鼓)に乗せて、若手の神楽舞が激しく舞う独創的な神楽は若楽の代表作となっています。
・ブレンドについて
今回の祝祭を記念したブレンドはこうした若楽そのものを表現したブレンドにしたいと思い、調整いたしました。
カカオチョコレートのような苦味と甘味はコーヒー本来の「正真正銘」や「伝統的な良さ」と言ったオーセンティックなラベリング。
クランベリーのような酸味、ブラウンスパイス、モルトやラム酒を思わせる後味にASLANならではの「現代的」や「アンチカルチャー」といったツイスト(ひねり)を感じられるはずです。
ASLANらしくないどこかコーヒーの本質的とも呼ぶべき苦味を最も大切にしつつ、その中にコーヒーの新しい要素をほのかに込めたこのブレンドは、僕が若楽現代表の内丸さんから直接ご指導頂いた「挑戦の責任と覚悟、感謝の大切さ」をテーマにしています。
このブレンドから、少しでも神楽の伝統と若楽の情熱を追随して頂ければ幸いです。