コロンビア北部に位置するサンタンデール県、ラプラデーラ農園は県内のアラトカ地区にあります。
1971年に設立されて以来、4世代に渡る家族経営が続いており、現在はオスカル・タザを農園主として、コーヒーの栽培、加工、輸出まで一貫して手掛けています。
1,700m以上と標高が高く、冷涼で低湿度な環境は品質の高いコーヒーの生育に理想的な環境です。また、農園からすぐのところにはシカモチャ渓谷が存在し、夜になると渓谷に向けて冷たい風が農園を吹き抜けます。
収穫を終えた木には年間各々20kg/年もの有機肥料を与え、常に健康的な栽培地を維持するように努めています。
またオーク、アボカド、柑橘、バナナ、グアバなど様々な樹木をシェードツリーとして積極的にコーヒーの周りに植えており、コーヒーはその木陰で強い日差しから守られながら、育てられています。
マウンテンウォータープロセス
このクロップはコロンビアからメキシコにあるDescamex社の工場に運ばれ、デカフェ加工されます。この際、工場のあるコルドバの麓にある、オリサバ山を源流としたキレイな水を使用し加工するので、この方法は「マウンテンウォータープロセス」と呼ばれています。
この方法では、カフェインのみを選択的に抽出することが可能なため、本来のコーヒーの味わいが損なわれることなく残ります。
品質へのこだわりとしてもう一点。水を使用してデカフェ加工した後、Descamexでは3種類の異なるドライヤーに豆を順番に入れ、ゆっくり均一に乾燥させていきます。この丁寧な後処理により、急激な乾燥で味わいを損なうことを防いでいます。
デカフェの工程について
高品質なデカフェの工程プロセスは主に3つあって、有名なスイスプロセスと今回のメキシコウォータープロセスはほとんど工程が同じです。
どちらもコーヒー生豆をタンクに入れて水に浸して溶媒液を作って、作った溶媒液にデカフェにしたい豆を浸してカフェインを浸透圧で取り除くという方法になります。
違いは溶媒液を作るタンクの数です。
スイスプロセスは4つのタンクでそれぞれ溶媒液を作って、順番にデカフェにしたい豆を4つのタンクへ順番に浸していきながらカフェインを徐々に取り除いていきますが、今回のメキシコウォータープロセスは1つのタンクでこれを行います。
同一タンク内で加温・加圧・攪拌を行いながら浸透圧をかけてカフェインを取り除いています。
メキシコ式は同一タンク内で浸透圧の原理を利用してカフェインを取り除いていくのでコーヒー生豆を使って溶媒した溶媒液のコーヒーの風味の残留率がスイス式より相対的に高いのかもしれません。(あくまで仮説)
最近はメキシコ式の方がコーヒーの風味をより豊かに感じられるというユーザーが多い印象を受けていますが、その印象はこの工程の違いが要因の一つかなと個人的には考えています。
高品質なデカフェの商品設計は業界内でもトレンディーな分野なので今後の研究でこの辺りはきっと明らかになっていくと思います。
どちらもデカフェ豆として高品質な製造工程であることは間違いないと思うので、スイス式でもメキシコ式でもカフェインレスであることへの安心保証としてはどちらでも大丈夫だと思います。
それよりも僕らが1杯のコーヒーとして感じるデカフェの品質と味にとって最も大きな影響を及ぼしているのは、むしろ製造工程後の輸出入の管理とロースタリーショップの保管も含めた品質管理が大きいです。
デカフェのお豆は水に浸したり窒素で浸透圧をかけたりするので生豆の細胞組織の結びつきが緩やかに、柔らかくなっています。
柔らかい細胞壁は菌の活動による細胞分解も大きくなるので、風味の劣化が通常の生豆より極端に早くなります。
デカフェのお豆はこうした細胞組織の状態が風味の品質に大きく影響していると思っています。
もちろん製造工程の違いも風味にかなり影響しますが、現状のコーヒーインフラでは、それを1杯のコーヒーとしてエンドユーザーが感じるには精製処理後の貿易商社の輸入管理や、ロースタリーショップの保管管理の方が製造工程よりも相対的に風味に対して大きな影響を及ぼしていると感じています。
なのでデカフェの豆で美味しいものを飲みたいと思う場合は、品質管理を大事にされてるお店で買うのが個人的にはオススメです。