ハルディネス・デル・エデン(Jardines del Eden)はコロンビアコーヒー生豆輸出業者であるCofinet社の代表フェリペさんが経営する農園です。
Cofinet社は前身の会社の代から80年以上も続くコロンビアでも有数の輸出業者で、フェリペさんが代表となった2015年に会社名を"Cofinet"に改め、その事業内容も革新させました。
元々、コロンビアと言えばその多様な品種群と恵まれた環境を活かしたウォッシュドテロワール。
父ハイロの代はそんな古き良きコロンビアウォッシュドの生豆輸出に力を入れていましたが、フェリペは、Cofinetに名前を改めて、ナチュラルプロセスはおろか特殊発酵プロセスを加えた精製技術に力を入れました。
特に2017年以降色んな意味でコーヒー業界を賑わせる”Infusion Coffee”に対して積極的に研究投資してきたことが注目を浴びるきっかけとなりました。
当時は着香と情報の不透明性ばかりが悪目立ちするコーヒーとしてネガティブなラベリングが行われているインフージョンコーヒーでしたが、そのイメージを払拭してくれたのがフェリペもといCofinetのインフージョンコーヒーだったのは今でも覚えています。
ただCofinetの真髄は特殊発酵プロセスという非常に局所的な価値ではありません。
フェリペは会社の事業として日々世界のトレンドを追いかけながら、世界のロースターが驚くようなクロップを生み出していく一方で、また、コーヒー生産の分業制にも取り組んでいます。
彼らの真の価値は特殊発酵プロセスという前衛的な行動目標と生産工程の分業化という功利的な行動目標が両立している点だと思います。
特殊発酵プロセスが世界を驚かせる前衛的な行動目標であり、彼らのブランドとするならば
生産工程の分業化は高品質なコーヒー生豆商品を安定供給するための功利的な行動目標になると思います。
Cofinet社では【コーヒーチェリーの生産】⇒【精製工程】を分業化しています。
コーヒーチェリー収穫後の精製工程をCofinet社が一挙に担うことで、農家さん達の負担を減らすのが目的です。
農家が良質の完熟したチェリーだけを生産することに集中できる環境を分業体制の整備により生み出します。
そのため、Cofinetとやり取りをする農家さんはチェリーの質を向上させただけでなく、品質の高いチェリーは買い取り価格も高くなる為、収入も向上させることができ、意欲的に持続可能なコーヒー栽培に取り組めるようになりました。
まぁ要は・・・
インフージョンみたいな非常にセンシティブでネガティブなラベリングが強い話題の中心に自分から突っ込んで話題性を集めて、新しい価値を生み出す特殊発酵プロセスの研究を自身のブランドとして探求していきながら、その活動の裏には現実的な組織運営論が基盤になっててそれが葉脈となって地域全体に栄養を供給するようなフェリペの事業モデルは社会学専攻の僕にとってアバンギャルドな地域創生プロジェクトに見えてくるって話です。
Jardines Del Eden
ここまではフェリペたちの事業モデルの社会有用性のお話。
ここからが今回のクロップの話になるんですが・・・フェリペは事業モデルのフレームワークがある程度、完成した翌年にさらなる挑戦へと踏み出します。
それが”エデンの園”
別名ハルディネス・デル・エデンの建設です。
フェリペは会社の事業モデルの骨格を成す「特殊なプロセスを専門とした輸出事業モデル」を拡大させるために、2016年に自社農場をゼロから建設することに決めました。
その農園が今回扱うハルディネス・デル・エデン(Jardines del Eden)です。
彼らがJardines del Edenを立ち上げるために選んだキンディオの地域は、標高1,700〜2,100mの高地で、豊かな火山性土壌、年間降水量2,000〜2,200mmと多く、気温も5〜28°Cで、高品質のコーヒー栽培にとってまさにエデン(楽園)のような理想的な気候条件を提供します。
コロンビアコーヒーを作る上で最も最適なこのエデンで彼は様々な特殊発酵プロセスの研究を品種群から行っています。
INFUSION PROCESS(インフージョン製法)
インフュージョン(INFUSION)とはコーヒーの精製過程の中に存在する発酵工程において、コーヒーチェリーと共に果物など何か別のモノを加えることによってその香りをコーヒーに着香させる製法になります。
所謂クラフトサケ、クラフトビールならぬクラフトコーヒーといったところでしょうか。
”ただの着香”と思われることも多く、何を加えたのかすら隠す生産者もいたり、情報の不透明性において数多くの問題点も顕在化し、かなりネガティブなイメージが先行している製法でもあります。
コーヒー業界のみならず異業種でもクラフトシリーズはなんでもそうですが、まがいもの扱いされる可哀そうな子たち・・・
でも、そんな中でもちゃんと誠実に向き合ってるモノは当たり前の話なんですが、面白いやつがあります。
僕がこのインフュージョンコーヒーで面白いと思っている点は、加えるモノによって着香する要素と、加えるモノから得られる酵素によって促される発酵要素が存在していることです。
特に後者の酵素の扱い方が上手なインフュージョンコーヒーはボディと質感の印象が大きく異なります。
華やかな香りの印象とは一転した分厚くて重たい濃厚な質感が一気に口内に広がってきます。
晴天だった空に次第に分厚い雲がやってきて、途端に降り注ぐ通り雨の後に、また一気に晴れて虹がかかる。
僕にとって良いインフュージョンコーヒーのバランスは常にこうしたドラマチックなグラデーションのイメージがあります。
ただ、もちろんのことですが、コーヒー由来の酵素から得られる風味を感じるのは難しくなります。
なんでしょう、誤解を恐れず言うとしたら、良くも悪くも「コーヒーらしくないコーヒー」になるイメージです。
インフュージョンコーヒーは「らしくないコーヒー」に真っすぐでいいんですよ。
堂々と「らしくないにこだわってます」って言えばいいやん。
っていうのが僕の完全な個人の感想です。
それをチープと思うか、面白いと思うかどうかはその人の価値規範
Cinnamon Rolls+Wine Yeast
今回のフェリペのクロップは非常にアバンギャルドなロットです。
収穫したてのコーヒーチェリーを発酵タンクに入れ、そこにシナモンスティックとワイン酵母を加えています。
約72時間の嫌気性発酵を行って、その後、果肉を除去し、ミューシレージを一定量残した状態で、アフリカンベッドの上で丁寧に乾燥させます。
フェリペは、ワイン酵母を入れることにより、これまで単調的と批判されていたインフージョンコーヒーとは一線を画すカップバランスを生み出しています。
十分に糖度を保ったチェリーの糖度が加えた酵母の活動を促しこれまでのコーヒーになかったユニークで重厚なマウスフィールを完成させています。
加えて、単に果物やスパイスを入れて発酵させるより、一度お酒にしてから加えることで、その香りもはっきりとコーヒーに移ります。
Pink Bourbon
ピンクブルボンは、レッドブルボンから突然変異した品種と思われていますし、
「ブルボン ロサード」とも一般的には呼ばれます。
名前の由来は見た目のカラーです。
ピンクブルボンは真っ赤に色づくわけではなく、赤色がうっすらしてピンクのような色味になります。
と、これまでは言われていましたが、実は2023年に衝撃の研究結果が発表されました。
Cafe Imports | Pink…Bourbon?: Cryptozoology and Genetics in Specialty Coffee
ピンクブルボンがレッドブルボンからの派生というのは迷信で、エチオピアランドレースということがDNA研究の結果分かりました。
え?
お前、エチオピアやったんか?←世界中が今ここ
前回サブスクで紹介したアルージ種もエチオピアから伝搬したコロンビアの品種としてまことしやかに騒がれていますが、こうした伝搬ルートが歴史的に証明されていないエチオピアグループの発見がウィラなど一部の地域で盛んにみられます。
チロッソやオンブリゴンなどもその一種だと言われています。
その流れで改めて新種として認定されたピンクブルボンは、ウィラ県を中心に生息する独自の生態系を持つため、ここ数年爆発的な人気を誇ります。