ハルディネス・デル・エデン(Jardines del Eden)はコロンビアコーヒー生豆輸出業者であるCofinet社の代表フェリペさんが経営する農園で、ピジャオ地方キンディオ地区の最も高い標高に位置しています。
Cofinet社は前身の会社の代から80年以上も続くコロンビアでも有数の輸出業者で、フェリペさんが代表となった2015年に会社名を"Cofinet"に改め、その事業内容も革新させました。
フェリペは、ウォッシュでの精製がほとんどであったコロンビアにおいて、特殊な発酵プロセスを加えた精製技術に力を入れ、会社の事業として日々世界のトレンドを追いかけながら、世界のロースターが驚くようなクロップを生み出しています。
また、同社はコーヒー生産の分業制にも取り組み、Cofinet社がコーヒーチェリー収穫後の精製工程を一挙に担うことで、農家さん達の負担を減らし、彼らが良質の完熟したチェリーだけを生産することに集中できる環境づくりを実現しました。
このようなサポートにより、同社とやり取りをする農家さんはチェリーの質を向上させただけでなく、品質の高いチェリーは買い取り価格も高くなる為、収入も向上させることができ、意欲的に持続可能なコーヒー栽培に取り組めるようになりました。
事業モデルのフレームワークがある程度、完成した翌年にフェリペはこの特殊なプロセスを専門とした輸出事業モデルを拡大させるために、2016年に自社農場をゼロから建設することに決めました。その農園が今回扱うハルディネス・デル・エデン(Jardines del Eden)です。
彼らがJardines del Edenを立ち上げるために選んだキンディオの地域は、標高1,700〜2,100mの高地で、豊かな火山性土壌、年間降水量2,000〜2,200mmと多く、気温も5〜28°Cで、高品質のコーヒー栽培にとってまさにエデン(楽園)のような理想的な気候条件を提供します。
SL28
最後に品種の勉強をしたいコーヒーマニアのために、今回のロットを構成するSL28の紹介ですが、SL系は市場的に現在ブランド価値がうなぎのぼりなので説明が難しい。
ということで、そもそもSL(エスエル)って何?って話をざっくりしていきましょう。
コーヒーの品種を体系的にかなりざっくり分けると大きく3つの時代背景に分布されていきます。(ざっくりなので異論は認めます)
1:【スーフィズムと大航海時代】1500年代~1700年代(当時の中東世界の支配下で種子がエチオピアからメッカまでの巡礼地沿いにスーフィズム教団を中心として伝搬。イエメングループはここでエチオピアグループから派生。その後、大航海時代の植民地政策の流れで世界各地に第一次伝搬)
2-a:【アフリカでさび病最初の大流行】1869年~1910年代(セイロン島のコーヒーの木がさび病で全滅。その後、アフリカでさび病が大流行。研究者たちが躍起になって病気に強いDNAを持つ品種選抜を開始。)
2-b:【中南米でさび病大流行】1950年代(アムステルダム・ジャワ系のティピカグループとは別の新たな品種群が中南米に伝搬。ここで伝搬するのはさび病に耐性があることが研究によって判明した農業用選抜群。Ex.ゲシャ1931)
3:【東ティモールの奇跡】1927年(人工交配ルート。「東ティモールの奇跡」と呼ばれる世紀の大発見によってロブスターの優性遺伝を継承したアラビカ種の開発が可能に。)
SL系の品種が誕生したのは時代背景的に2になります。
さび病が大流行したことによってアフリカの当時のコーヒーの木の生態系は壊滅的なダメージを負います。
その中でも生き残ったさび病に強い耐性を示した品種を今後の農業用品種として選抜していく流れがここで起きます。
そして、SLは当時、タンザニアからケニアにかけて品種選抜の研究を行っていたScott Laboratoryies(スコット研究所)の略称です。
これが今に続くケニアオリジナル品種の誕生ですが、本当にざっくりとした説明なので詳しく知りたい方は以下を参照してください。
先ずは毎度お馴染みのWorldCoffeeResearchの品種カテゴリーをそのまま抜粋。
[ Background ]
ーSL28ー
遺伝的分類 : ブルボン-ティピカグループ(ブルボン種との関連性)
血統 : 「タンガニカ干ばつ耐性」のセレクション。ブルボンのような遺伝的背景。
ブリーダー : Scott Agricultural Laboratories
歴史 : SL28は、アフリカで最も有名で高く評価されている品種の1つです。その結果、1930年代に最初に選ばれたケニアからアフリカの他の地域(特にウガンダのアラビカ種栽培地域では重要です)、そして現在はラテンアメリカに広がりました。
この品種は中高地に適しており、干ばつに強いですが、コーヒーの主要な病気にかかりやすいです。
SL28は、その「素朴さ」で注目に値します。
ここで言う「素朴さ」とは一度に何年も、場合によっては数十年も手入れせずに放置し、その後、成功した生産に戻ることができることを意味します。
ケニアの多くの地域には、樹齢60〜80年のSL28の木があり、まだ生産的です。
SL28は、旧スコット農業研究所(現在は国立農業研究所、カベテにあるNARL、詳細は以下)で選択されました。
1935年から1939年にかけてスコット研究所で行われた個々の木の選択には、SLというプレフィックスが付けられ、さまざまな起源の42本の木が選択されています。
ここで選抜された42本の木が収量、品質、干ばつおよび耐病性について研究されました。
SL28は、1935年に”タンガニーカ干ばつ耐性”と呼ばれる個体群の1本の木から選択されました。
1931年、スコットラボの上級コーヒーオフィサーであるADトレンチは、タンガニーカ(現在のタンザニア)のツアーを実施。歴史的文書によると、彼はモドゥリ地区で干ばつ、病気、害虫に耐性があるように見える品種が育っていることに気づきました。
その際に、種子は収集され、スコット研究所に持ち帰られ、そこでその干ばつ耐性が確認されました。
それは、その子孫であるSL28に取って代わられるまで広く分布しました。
SL28は、この集中育種の時期のプロダクトと見なされました。
最近の遺伝子検査により、SL28がバーボン遺伝グループに関連していることが確認されています。
個人的なまとめ
WCRの調査結果はいつも歴史的背景の中から特に重要な部分を時系列的にまとめてあるので、理解するのが難しいかと思いますが、ここで大事なのは2つでしょうか。
1.SL品種の由来はスコット農業研究所が病気への耐性がある品種選抜によって農業用品種として選抜された品種群の総評であること。
2.SL28はタンザニアのモドゥリ地区を調査した際に発見し、持ち帰ったブルボングループの品種
SL34はWCRの調査でティピカグループであることが判明しているため、SL28とは大きく異なる風味個性があります。(SL34が気になる人はケニアの浅煎りの情報を読んでください)